「3.弁護士と守秘義務について」
弁護士職務基本規程には以下のような規程があります。
「第二十三条 弁護士は,正当な理由なく,依頼者について職務上知り得た秘密を他に漏らし,又は利用してはならない。」
皆さんが,何らか困ったことがあって弁護士に相談するとして,その弁護士がお聞きした内容を勝手に他人に話すようでは安心して相談することはできないと思います。依頼者からの相談を聞いてその対応にあたる我々弁護士にとって,守秘義務は依頼者との信頼関係を構築し,維持するための最も基本的で根幹となる義務なのです。ですから,守秘義務は絶対に守ります。
過去に,親から頼まれて親族の相談を聞いて対応したことがありますが,その後,親から相談は聞いたのかとか,どうなったのかと聞かれても,自分ではなく親族の方に聞いてくれと言って,相談を聞いたことも含めて絶対に答えませんでした。我々としては,墓場まで持って行くしかないのです。
もちろん,依頼者が了解していれば,守秘義務は解除されますので他人に話すことも可能ですが,そうであっても多くの場合,極めてプライバシー性の高い内容を含みますので,本当に必要な場合以外は話すことはまずありません。
時々,テレビのニュースなどで,逮捕された被疑者に面会した弁護士が,警察署を出たところでマスコミの取材に応じている場面を見ることがありますが,あれはきちんとご本人に了解をもらい,その了解の範囲内で話しているのです。
私は,刑事事件の場合,特にご本人が強く希望しない限り(そういうことはまずありませんが),仮にご本人が了解をしていても,起訴される前の段階でマスコミの取材に応じることはありません。起訴された後,公開の法廷で出た話については,正確な報道をしてもらうため,その解説の範囲で応じることはあります。「法律用語は正確に」というコラムで書いたように,不適切で誤った報道をされることがあるからです。
過去,ある有名な事件で公判後の会見を司法記者クラブから要請されたため,ご本人の了解を得て,法廷で出た話の範囲という約束で会見に応じたことがあります。しかし,テレビでよく見かけるリポーターと称する人が,範囲外のことを色々と質問し始め,それは答えないと回答したら,「なんで答えないんだ!」と怒り始めて,「約束が違う。そんなことを言うならもう会見は止める!」と私が応酬して,ケンカになりかけたことがあります。
何をどの範囲で答えるかは守秘義務との関係で決まることであり,それは当然,マスコミの人が知りたい情報とは一致しませんが,守秘義務がある以上,答えられないものは答えられないのです(結局,その日の夜,時の総理大臣が解散を表明するというビッグニュースが出たため,私の会見が報道されることはありませんでした。私の時間を返してくれと言いたくなります)。
我々弁護士は,弁護士職務規程第21条で,「依頼者の権利及び正当な利益を実現することに努める」ものとされていますので,依頼者のために頑張る立場ということになります。マスコミやその報道を待っている国民の皆さんのために頑張る訳ではありません。依頼者の利益になると判断すれば,了解を得た上で話すことはありますが,利益にならないと判断すれば,当然依頼者は了解しませんので,どんなに批判されようが,絶対に話すことはありません。
刑事事件でも民事事件でも,弁護士は一切取材に応じないという対応をしていることも多いと思いますが,それは我々としては当然のことなのです。
このような我々弁護士の立場や守秘義務ということについて,正確にご理解をいただきたいと思っています。
(2024/2/15 弁護士 戸谷嘉秀)
弁護士職務基本規程には以下のような規程があります。
「第二十三条 弁護士は,正当な理由なく,依頼者について職務上知り得た秘密を他に漏らし,又は利用してはならない。」
皆さんが,何らか困ったことがあって弁護士に相談するとして,その弁護士がお聞きした内容を勝手に他人に話すようでは安心して相談することはできないと思います。依頼者からの相談を聞いてその対応にあたる我々弁護士にとって,守秘義務は依頼者との信頼関係を構築し,維持するための最も基本的で根幹となる義務なのです。ですから,守秘義務は絶対に守ります。
過去に,親から頼まれて親族の相談を聞いて対応したことがありますが,その後,親から相談は聞いたのかとか,どうなったのかと聞かれても,自分ではなく親族の方に聞いてくれと言って,相談を聞いたことも含めて絶対に答えませんでした。我々としては,墓場まで持って行くしかないのです。
もちろん,依頼者が了解していれば,守秘義務は解除されますので他人に話すことも可能ですが,そうであっても多くの場合,極めてプライバシー性の高い内容を含みますので,本当に必要な場合以外は話すことはまずありません。
時々,テレビのニュースなどで,逮捕された被疑者に面会した弁護士が,警察署を出たところでマスコミの取材に応じている場面を見ることがありますが,あれはきちんとご本人に了解をもらい,その了解の範囲内で話しているのです。
私は,刑事事件の場合,特にご本人が強く希望しない限り(そういうことはまずありませんが),仮にご本人が了解をしていても,起訴される前の段階でマスコミの取材に応じることはありません。起訴された後,公開の法廷で出た話については,正確な報道をしてもらうため,その解説の範囲で応じることはあります。「法律用語は正確に」というコラムで書いたように,不適切で誤った報道をされることがあるからです。
過去,ある有名な事件で公判後の会見を司法記者クラブから要請されたため,ご本人の了解を得て,法廷で出た話の範囲という約束で会見に応じたことがあります。しかし,テレビでよく見かけるリポーターと称する人が,範囲外のことを色々と質問し始め,それは答えないと回答したら,「なんで答えないんだ!」と怒り始めて,「約束が違う。そんなことを言うならもう会見は止める!」と私が応酬して,ケンカになりかけたことがあります。
何をどの範囲で答えるかは守秘義務との関係で決まることであり,それは当然,マスコミの人が知りたい情報とは一致しませんが,守秘義務がある以上,答えられないものは答えられないのです(結局,その日の夜,時の総理大臣が解散を表明するというビッグニュースが出たため,私の会見が報道されることはありませんでした。私の時間を返してくれと言いたくなります)。
我々弁護士は,弁護士職務規程第21条で,「依頼者の権利及び正当な利益を実現することに努める」ものとされていますので,依頼者のために頑張る立場ということになります。マスコミやその報道を待っている国民の皆さんのために頑張る訳ではありません。依頼者の利益になると判断すれば,了解を得た上で話すことはありますが,利益にならないと判断すれば,当然依頼者は了解しませんので,どんなに批判されようが,絶対に話すことはありません。
刑事事件でも民事事件でも,弁護士は一切取材に応じないという対応をしていることも多いと思いますが,それは我々としては当然のことなのです。
このような我々弁護士の立場や守秘義務ということについて,正確にご理解をいただきたいと思っています。
(2024/2/15 弁護士 戸谷嘉秀)